曲の特徴を捉えた演奏を目指そう
本日は、合奏経験者向けアンサンブルの日でした。
今日が本番だったりして、どうしても空いてない方が数名いらしたので、参加は講師以外に2人。
「少し寂しいなぁ…」と思っていたところでしたが、中学生の女の子が、お母様と一緒に見学・体験に来てくれました。
学校では吹奏楽部に属していて、アンサンブルをやったら楽しかったそうで、この合奏経験者向けのクラリネットアンサンブルにも参加しようと思って下さったとのこと。
中学生で、アンサンブルの楽しさを知っているなんて、素敵ですね。
さて、今日の演奏曲は、数年前に「吹いてみたい!」と講師が購入したものの、なかなか演奏の機会がなかった三重奏版の『ハッピーバースデー変奏曲・J.シュミット作曲』です。
変奏曲って何?
たまに聞く「変奏曲(ヴァリエーション)」。
意味がわかるような、わからないような…という方も多いかと思います。
これは、テーマとなる音楽を、読んで字のごとく、「変えて演奏していく」音楽の様式です。
例えば、よく知っている『きらきら星』、あの曲を使って、モーツァルトも変奏曲を書いています。
「ド・ド・ソ・ソ・ラ・ラ・ソ」を「ド・ドレドシド・ソ・ソラソファ♯ソ・ラ・ラシラソ♯ラ・ソ」のように、テーマを生かしつつ、また、時には全く面影のないメロディーへと変えて演奏していく、それが変奏曲です。
むむむ…踊りの曲ばかりだぞ…
そして今回は、みんながよく知っている『ハッピーバースデー』のメロディーが、「メヌエット」「レントラー」「ワルツ」「ポロネーズ」「マズルカ」「スウィング」に変奏されている楽譜。
原曲が4分の3拍子だからか、踊りの曲ばかりではないですか!
簡単なメロディーだから、どうってことない気がしていたのですが、これは意外に手こずるかもしれません。
初見で通してみよう
では、まず初見での通しから。
B♭クラリネット3人で3パートに分かれ、さらに講師が3番パートをバスクラで吹いてみました。
参加してくれた中学生の子に、スタジオに向かう途中「初見は得意?」と聞いたところ「まあまあです」との返答。
「まあまあって言う人は、実は得意なんだよ」なんて話をしていたのですが、思った通りかなりの初見力でした。
通してみると、やはりいろいろな踊りの雰囲気の違いを出すのが大変そう…
それに、ダンスの種類が変わる時に、そのままのテンポで進んでいったり、一瞬止まってみたり、パターンがいろいろあるので、その辺も整理する必要がありそうです。
それぞれのダンスの特徴を知る
10分ほどの個人練習のあとは、いつものように区切りながら仕上げていきます。
今回は特に、明白に踊りの種類で変奏が分かれているので、踊りごとに練習します。
と言っても「メヌエットとワルツの違いって何?」「レントラーってどんな曲?」という状態では、仕上げも何もありません。
共通のイメージを持つために、1つずつ特徴を知ることにしました。
すると「舞踏会で優雅に踊るための曲」であったり、「農民が踊る時に使っていた曲(いわゆる民族舞曲)」であったり、それぞれの曲が使われていたシチュエーションが見えてきて、同じ「フォルテ」という記号であっても、曲ごとに違う音量・音色であることがわかり、曲の精度が格段に上がったのです。
体験で参加の中学生さんも、すごく上手に吹き分けができていて素晴らしい!
やはり、曲のイメージを持つということは、とても大切なことですね。
アンサンブルで合図を出す練習
それぞれの曲がまとまってきてからは、曲同士のつなぎの練習。
前述の通り、カウントを止めずに進む場合(これはこれで、止まらないのに曲調を変えねばならず大変です)、絶妙な間を空けた方がいい場合…と曲ごとに違い、さらには「この変奏に入る時は1番が合図」「こちらは3番が出す」など、曲ごとにきっかけを担当するパートが異なる点も、ちょっと苦労したポイントでした。
アンサンブルで合図を出す時に大切なのは、ブレスのスピードと、楽器を動かすことです。
吹きたいテンポ・吹いてもらいたいテンポでブレスをすると、自分も周囲の人も、テンポを掴むことが容易になります。
また、軽く指揮をするように楽器のベルを動かすと、視覚情報としてテンポが掴めるので、合いやすくなります。
この場合は、顔を動かさずにクラリネットだけ動かすと、音がブレる原因になってしまいますので、顔(口)と楽器の角度が絶対に変わらないようにしましょう。
今日は、この練習になかなかの時間を取られましたが、だいぶスムーズになりました。
では、管内の掃除と、最後の個人練習を経て、いよいよ通しです!
仕上げます!
私は、最初の初見大会で3番パートの楽譜を、バスクラリネットで吹いていましたが、仕上げていくうちに「バスクラはない方がかわいいかも」と思い、吹かないことにしました。
これが、やはり正解!
同じ楽器のみのアンサンブルは、なにせ音色が同じなので、伴奏とメロディーの差が出しにくく「何やってるのかよくわからないなー」となってしまうことも多いのですが、今回の編曲は上手にできていて、同音域のまとまりもありつつ、メロディーが際立つ、という理想的な演奏になりました。
1回目の通しでは、曲の変わり目でついついみんな身構えてしまい、少しちぐはぐな印象になってしまいましたが、2回目は落ち着いて吹くことができ、きちんとまとまって終了。
体験の中学生さんにも楽しんでいただけたようですし、お母様もなかなか目にすることのない「初めて見た楽譜を作り上げていく」という作業に、感心なさったようでした。
技術・音楽性・初見力と、全てにおいて大人に引けを取らない中学生、というのは、私達にとってもとてもいい刺激になりました。
また一緒に演奏できることを楽しみにしています。