ピアノ曲をクラリネットアンサンブルで吹く難しさ
本日は、上級者アンサンブルが行われました。
発表会ご出演予定の内の1名がどうしてもご都合がつかず、お休みの連絡があったのですが、「次の発表会には出られないけど、アンサンブルには参加したい」という方が来て下さったので、今日もB♭クラリネット5名・バスクラリネット1名の計6名で演奏できることになりました。
今回は六重奏曲があるので、全パート揃ってできるのは嬉しいことですね。
演奏曲は引き続き、ベートーヴェン作曲『ピアノソナタ第8番ハ短調 Op.13「悲愴」より第2楽章(抜粋)』と、ピアソラ作曲『リベルタンゴ』です。
ピアノの音源をたくさん聴こう
今回演奏するベートーヴェンのソナタは、タイトルにもあるように、ピアノのために書かれた曲です。
管楽器と大きく違う点は、「1人で完結できる」ということでしょう。
もちろん、クラリネットにも独奏(完全に1人で吹く)の曲もありますが、基本的に私達は誰かと合わせる楽器なので、ピアノのように1人で音楽を仕上げて、奏でるということはほとんどありません。
基本的な演奏スタイルが違うわけですので、この機会に、ピアノの音源をいろいろと聴いて、「ピアノの演奏とはどういうものなのか」に触れてみましょう。
わかりやすいので、今回演奏する『悲愴』の第2楽章を比較するといいかもしれないですね。
「全然違う!」なんてことはないと思いますが、ピアニストによって、演奏の解釈・表現がちょっとずつ(時には大きく)違うことがわかると思います。
クラリネットのソロ(ピアノ伴奏つき)の曲は、ある程度の演奏基準のようなものがありますが、ピアノはもっと自由度が高いですね。
そういう部分は、聴いてみないとわからないことですので、ぜひ体感してから、アンサンブル演奏に臨みましょう。
ピアノ曲をクラリネットアンサンブルで吹く難しさ
ピアノ演奏のその「自由度の高さ」というのは、例えば「特に楽譜に指示はないけれど、盛り上がるからほんの少し前に行く」であったり、「歌い込みたいからちょっと引っ張る」であったり、アゴーギク(緩急をつける奏法)的な部分なのですが、これは1人で演奏しているから、難なくできることです。
それぞれの指が、バラバラにテンポを変えようとする、ということはないですからね。
ここに、我々クラリネット吹きがアンサンブルでピアノ曲を吹く難しさがあります。
「ほんの少し前に行く」の「ほんの少し」がどれくらいなのか、どのタイミングで前に行き始めるのか、どこでそれを緩めるのか、など、複数奏者で演奏するのであれば、個々の感受性や表現力に任せることはできません。
かと言って、逐一きっかり決めてしまうのでは「自由」ではなくなってしまうわけで、非常に悩ましいところです。
それぞれが参考にしたい音源を共有してみたり、合わせの時に「こんな感じでやるのはどうか」と、実際演奏しながら擦り合わせてみることで、共通のイメージを持つことができますので、まずは自分がどのようにしたいのか、どんなふうな演奏を素敵だと思うのかを、見つけておきましょう。
そして、それを表現するには、どう吹いたらいいかを練習しておけると、アンサンブルする時にスムーズに進めることができます。
ピアノで演奏される曲の良さを引き出しつつ、クラリネットの柔らかい音色を生かした演奏ができると良いですね。
ちょっとした「間」も意識しよう
ピアノ演奏の緩急には、「間」も含まれます。
rit.などの表記がなくても、ごくわずかにテンポを緩め、ほんの一瞬間を置くことが求められる箇所がありますので、それがどこなのか探して、不自然にならない間の取り方を練習しておいて下さい。
また、自由な演奏に制限は出てしまいますが、ゆっくりした曲でよくある「だんだんテンポが遅くなる」ことを避けるためにも、メトロノームも活用しましょう。
前に行くにしても、後ろに引っ張るにしても、まずはきちんとした演奏があってこそ。
土台がしっかりとしていないのに、音楽を揺らすことはできません。
今回も皆さん上手に吹かれていましたが、さらに自然に、自由な演奏を期待しています。