クラリネット音程が合わない時の対処方法
鍵盤楽器などと違って、一度に一つの音しか鳴らせないクラリネットは、完全に1人で吹くことよりも、ピアノと一緒に演奏したり、アンサンブルや吹奏楽、オーケストラなど、複数人での演奏機会が多いですね。
そうなると、悩ましいのは音程。
1人で気楽に吹いていれば気になりませんが、人と合わせるとなると、揃った音程が求められます。
今回は、音程が合わない原因と、その対処方法をご説明していきます。
クラリネットの音程が合わない理由
「音程が合わない」と一言で言っても、内容はいろいろありますね。
- いつも通り吹いてるのに、音程が合わない
- 楽器を出してから、なかなか音程が合わない
- 演奏の中で、周囲と音程が合わない
これらは、原因が全く違いますので、分けて考える必要があります。
いつも通り吹いてるのに、音程が合わない
普段練習している時と同じように吹いているのに、音程が合わない、ということであれば、吹き方自体が安定していないことが考えられます。
口がゆるかったり、締まりすぎていたり、また息が遅かったりすることでも、正しい音程で吹けない原因になります。
楽器を出してから、なかなか音程が合わない
楽器を出してしばらくの間、音程が合わない場合は、クラリネット本体の温度に原因があります。
特に冬の時期は、楽器が冷え切っていることが多く、クラリネットをケースから出してすぐは、音程が低くなってしまいます。
また、夏場に気温が高いところに楽器を保管していると、逆に音程は高くなります。
演奏の中で、周囲と音程が合わない
どんなに素晴らしい演奏をしても、音程のズレがあると、その素晴らしさが半減して聞こえてしまいます。
対処するためには、演奏中に音程が合わない理由を考えていきましょう。
- そもそもの基準の音程が合っていない
- 楽器のくせ(音程の傾向)を把握できていない
- 基礎練習と曲の吹き方が変わってしまっている
- 周囲を気にしていない
など、楽器の問題だけでなく、奏者自身もしくは奏法に原因がある場合もあります。
クラリネット音程が合わない時の対処方法
音程が合わない理由がわかっても、具体的になぜそうなるのか、また、対処の仕方がわからなければ、意味がありませんね。
しっかり対処方法を知って、人と合わせる演奏の質を高めていきましょう。
いつも通り吹いてるのに、音程が合わない
「何かを変えているわけではないのに、音程が合わない」ということは、普段から正しい音程で吹けていないので、吹き方自体を見直す必要があります。
音程がぶら下がっているのであれば、口がゆるかったり、息のスピードが遅い可能性があります。
逆に、なんだか上ずっているということであれば、口を締めすぎていないか確認しましょう。
どちらも、「しっかり息を入れる」ということを意識すると、音程は安定します。
いつもの基礎練習から、音程の良い吹き方を身につけていきましょう。
楽器を出してから、なかなか音程が合わない
これは先述の通り、楽器本体の温度に起因するものですので、極端に気温の変化があるような場所で保管しないようにしましょう。
人が快適でない場所は、クラリネットにとっても良くありません。
ただ、冬場などは、「学校に行く」「レッスンに行く」など、外を持ち歩くだけでも、楽器が相当冷えてしまいますので、吹く前に室温になじませたり、少しずつ息を入れて温めたりして(フーフー必死にやるのは駄目です!)、クラリネットを常温に近くした状態でチューニングするようにしましょう。
ちなみに「楽器が冷えている」「楽器がいつも以上に温かい」という時に、エアコンに当てたりするのは、絶対にやめましょう。
管体の割れにつながります。
そもそもの基準の音程が合っていない
これは、正しくチューニングできていないことが、原因として考えられます。
吹奏楽やアンサンブルなど、弦楽器と一緒に演奏する時以外は、クラリネットは真ん中の「ド」(左手小指以外を押さえた音)を基準にしますね。
チューナー(チューニングメーター)を使っていれば、真ん中にぴったり合っているかを見ることで、自分の基準音が正しいかわかります。
しかし、この「ドを合わせる」ということだけに注目しすぎると、口を変えたり、息を変えたり、「とにかく、その場のドをチューナーと合わせる」ことが目的になってしまうことがあります。
そうすると、「きちんと音が合ったように見えるけど、無理矢理合わせに行っただけ」になってしまいますので、曲の中ではその「ド」すら狂うことになり、周囲と合わない結果につながるのです。
「チューニングをするためのチューニング」にならないよう、くれぐれも気をつけましょう。
また、みんなで一斉に吹いて合わせる形のチューニングだと、合ってるように聞こえて、実は合っていない、ということもあります。
楽器のくせ(音程の傾向)を把握できていない
クラリネットには、「クラリネットとしての音程のくせ」と「各楽器の音程のくせ」があります。
例えば、全部指を離した「ソ」の音は、上ずるものですが、その上ずり方にも楽器個々の差がありますし、ごくたまにちょっとぶら下がったような音程になる楽器もあります。
当然「チューニングのドの音を合わせたから、全ての音の高さがパーフェクト」なんてことはありません。
普段から、一定の吹き方をした時に、各音の音程がどうなのかを、しっかり把握するように努めましょう。
基本的には、どの音でも同じ吹き方をせねばなりませんが、その楽器のくせに合わせて、ほんの少しだけ(あくまでほんの少し)口や息で調整することも、時には必要になってきます。
基礎練習と曲の吹き方が変わってしまっている
基礎練習をしたり、チューニングをする時の吹き方と、曲を吹く時の吹き方が変わってしまうと、当然曲中で音程を合わせることは難しくなります。
指やリズムに気を取られ「とりあえず音を鳴らす」という状態にならないよう、基礎の延長に曲の演奏があるということをしっかり意識しましょう。
周囲を気にしていない
部活に教えに行った時に、よく「全員チューナーでは合ってるのに、なんで音が揃わないんですか?」と聞かれることがあります。
基準の音を合わせておくのはもちろん大切ですが、周りの人が出している音を聴いて、どんな音程を狙って吹くべきか、自分が出したい音を想像してから吹かなければ、勝手に合ってくれることはありません。
周囲を探っておどおど吹く、ということではなく、自分の音程に責任を持ちつつ、寄り添う気持ちを持って演奏しましょう。
音程を合わせてより質の高い演奏をしよう
クラリネットの音程は、楽器自体が持っているものに加え、奏者次第でいくらでも変わりますので、何も考えずに吹ていては、パートとしてはおろか、隣の人と合わせることもできません。
とても音楽的で、技術的に優れている演奏をしても、音程がずれてしまうと、良さが半減してしまいます。
合わない理由と合わせ方をしっかり知っておいて、パート練習や合奏中にそれを活かし、より質の高い演奏を目指していきましょう。