クラリネットのタンギングの仕組みを知ろう
7月になって、あっという間に上旬も終わり。
今年は、雨が多い梅雨ですね。
楽器の管理・リードの管理を適切に行って、良い状態を維持するようにしましょう。
湿度の高いところに、放置したりしては駄目ですよ。
また、エアコンをつける季節になってきましたので、吹き出した風がクラリネットに直接当たらないように気を配ることも大切。
楽器の割れは、冬だけのものではないので、要注意!です。
さて今回は、タンギングのお話をしようと思います。
クラリネットはタンギングが難しい楽器とされていますので、苦手な方も多いはず。
まずはタンギングの仕組みを知って、きれいなタンギングをするために必要なことを理解しましょう。
なぜクラリネットのタンギングは難しいのか
世代にもよるとは思いますが、小学校や中学校の音楽の授業でリコーダーに触れた方は、多くいらっしゃると思います。
リコーダーでは、習い始めて一番最初にタンギングをやります。
その時に、苦労した記憶はあるでしょうか。
「タンギングの時は、トゥトゥトゥって言ってね」と教わっていると思いますが、特に何も意識せずに「トゥートゥートゥー」とやっていたはずです。
リコーダーでは難なくタンギングができたのに、なぜクラリネットだと難しく感じるのか。
答えは簡単。
「クラリネットがリード楽器だから」です。
リコーダーでは、息の流れを舌で区切れば良かったのですが、クラリネットのタンギングは、息は流したまま、リードの振動を止めねばなりません。
同じ『タンギング』でも、求められていること・やらねばならないことが、実は異なっているので、難易度に差が出てくるのです。
タンギングの発音イメージを切り替えよう
それでは、「クラリネットのタンギング、嫌だなぁ…」を嫌ではなくしていくための基盤作りを、考えていきましょう。
「タンギングが汚い」「舌の音がすると言われる」など、タンギングの悩みは尽きることがありませんね。
これは、タンギングの時に、リードに必要以上の舌が触れているところから起きているのですが、まず、タンギングに対する概念「トゥトゥトゥと言う」を取っ払いましょう。
ついさっき、リコーダーの話の時に「トゥトゥトゥって言ってね」と言われたはず、と書いておいてなんなのですが、「トゥ(tu)」という音は、少し雑音やにごりを伴いますので、実はタンギングに適しません。
これは、リコーダーの講師の研修を受けに行った時に言われた話なのですが、リコーダーのタンギングでも、発音を「タ(ta)」にすると、クリアに音を切ることができるようになるそうです。
特にクラリネットは、先述の通りリードに舌をつけねばなりませんので、「タ(ta)」の方がリードに触れる舌の面積を減らすことができ、圧倒的にきれいに・速くタンギングできます。
リードに触れる舌は最小限
先程から、ちらちらと触れてきましたが、「必要以上に舌をリードにつけない」「リードに触れる舌の面積を減らす」ことは、クリアな美しいタンギングには不可欠です。
べたっと舌をつければ、リードの振動は止まるので、もちろん音は切れますが、ぺたぺたした舌の音が聞こえたり、速いタンギングが困難になります。
極力、リードに触れる舌の面積は、減らすようにしましょう。
例えばスタッカートや、音と音の間を空けたい時にも、舌が触れる量を増やすわけではなく、つけている時間を長くするだけです。
舌のどこを使えばいいのか
では、その「最小限の舌の触れ方」ですが、よくレッスンでも「どこをつけたらいいのですか?」と質問されます。
タンギングでリードに触れる舌の位置は、大まかに「舌先」「真ん中に近い部分」に二分できると思います。
舌先でリードに触れる方が、速くコンパクトに動かすことができるのですが、舌の長さや形などによって、真ん中に近い部分になる方もいるでしょう。(私もそうです)
ここで大切なのが「舌の力を抜いて、なるべく自然な状態でリードに触れる位置」がベストである、ということです。
試しに、マウスピースをくわえて、「タタタタ…」と発音してみましょう。
舌のどの部分がリードに触れましたか?
ここで触れる部分が、自分にとって楽な位置、ということです。
私も、速いタンギングができるようになりたくて、舌のどこを使うかを探求している友人に、矯正の仕方を教わったことがあります。
しかし、かえって力が入ってしまい、思うように動かせない上、全く上手に切れなくなってしまい、しばらくの間「私の自然なタンギングって、どんなだっけ…」と、迷路に入ってしまったことがあります。
ですので、舌のどこを使うかに執心するよりも、より楽に・より少ない量をリードにつける、という練習をした方が、きれいなタンギングを身につけられるのです。
舌をリードのどこに当てるか
舌を楽に動かしてリードに当たる位置が、自分にとっては最適な位置だということはわかっていただけたかと思いますが、そうなると「リードのどこに触れればいいの?」という疑問も湧いてくると思います。
これについては、私の大学時代の師匠の言葉をお借りして説明しましょう。
「舌がリードのどこかに触れれば、振動は止まるんだよ」
かなり極端な物言いではありますが、これもまた、「無理にどこに触れるかを気にせず、自然な状態で舌をリードに当てればいい」ということですね。
私もとにかくタンギングが苦手でしたので、師匠からはたくさんの課題をもらいました。
その時に言われたのが、先述の言葉。
舌のどこをリードに当てなければいけないのか、リードのどこに舌を当てるべきなのか…と、「タンギングとは」に囚われていた私でしたが「おぉ…粗いけど、なんて的確な言葉…」と感動したのを覚えています。
とにかく、力を入れたり、無理をしないことが大切なんですね。
仕組みがわかったら練習あるのみ!
「タンギングってよくわからないけど、練習していればどうにかなるでしょ。口の中はどうせ見えないし」なんて、闇雲にやっていても、目標にはなかなか近づけません。
今回お話したポイントを押さえ、また、自分がどんな音を出しているのかしっかり耳を使いながら、練習しましょう。
コツが掴めれば、どんどん向上していけるはずです。
焦らず、まずはゆっくり大きな音で(これは全ての練習の基本ですね)、少しずつ、楽にコンパクトに舌を動かせるように練習を重ねていって下さいね。