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クラリネットB♭管とA管の違い

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クラリネット用ダブルケースに入ったB♭管とA管

「クラリネット」と一口に言っても、実はいろいろな長さの楽器があります。

普段私達が使っている楽器(B♭管)以外は、基本的に「特殊管」と呼ばれるのですが、特殊管として扱われない楽器の一つにA管があります。

結構名前を聞くけれど、よくわからないA管。
オーケストラを観ていて「なんであの奏者は楽器を替えてるんだろう…」「どうして横に同じような楽器が立ててあるのかな」と思われたことがあれば、その片方がA管です。

今回は、B♭管とA管の違いを知っていきましょう。

実音楽器と移調楽器

まず、「B♭(ベー)とかA(アー)ってなんなの?」という疑問があると思いますので、そこからご説明しましょう。

管楽器には「実音楽器」と「移調楽器」があります。

実音楽器

簡単に言うと、実音楽器は「ピアノと同じドレミが出せる楽器」です。
フルートやオーボエ、ファゴットなどがそうですね。

移調楽器

一方、移調楽器は「その楽器のドレミが、ピアノのドレミと異なる楽器」のことを指します。
クラリネット以外にも、トランペットやサックス、フレンチホルンなど、吹奏楽のほとんどの楽器が移調楽器です。

移調楽器と一言で言っても、「ドを吹いた時に、ピアノの何の音が鳴るのか」は、楽器によって様々です。

移調楽器の表記はドイツ語

ドレミが楽器によって違うということは、例えば吹奏楽で「はい、じゃみんなでドの音吹いてー」と指揮者から指示をされた場合、全員で同じ音を鳴らすことができません。

ですので、基本的には吹奏楽やオーケストラなどでドレミを表したい時は、ドイツ語での呼び方(ドイツ音名)を用います。

それが「B♭(ベー)」「A(アー)」などで、「B♭管」などの呼び名は、その楽器のドを吹いた時に、ピアノの何の音が鳴るのかを表しています。

B♭管は、「ド」を吹いた時に「ピアノのシ♭(ドイツ語でベー)」が、A管は「ド」を吹いた時に「ピアノのラ(ドイツ語でアー)」が鳴ります。

移調楽器に関しては「その楽器のドを吹いた時に、ピアノの何の音が鳴る楽器を使ってほしいのか」が、楽譜に記載されています。

B♭管とA管のパート譜

吹奏楽ではA管が出てくることはありませんが、ソロ曲やアンサンブルの時に楽器を間違えてしまうと大変なことになるので、しっかり確認して下さいね。

また、オーケストラの楽譜の場合は、途中で「in A」「in B♭」などと書かれていることがありますが、その表記は途中(その小節)から楽器を持ち替えることを示しています。

「B♭(ベー)」の表記について

実はドイツ語では「B」を「ベー」と読み、「シ♭」を表しています。
ちなみに「シ」の音は「H(ハー)」と表記するので、「ベー」に♭はいりません。

しかし、英語圏では「シ」のことを「B」、「シ♭」を「B♭」と書きますので、混乱を招かないように「B♭管」と書いて「ベーかん」と呼んで(読んで)います。

B♭管とA管の見た目の違い

同じ「ド」を吹いても、違う音が出るということは、B♭管とA管には明白な違いがあります。
それは長さです。

B♭管とA管の比較向かって左がA管、右がB♭管です。
(この写真では、直接楽器を立てていますが、スタンドを使わずに立てるのはとても危険なのでやめて下さいね)

楽器というのは、長ければ低い音が鳴ります。
「シ♭」と「ラ」は半音違いですので、A管の方が半音分長くなっています。

上管だけで

B♭管とA管の上管の比較

これくらいの違いがあります。

また、下管は

B♭管とA管の下管の比較

上管よりさらに長さに差があります。

このように、上管・下管が少しずつ長く作られていて、トータルでは

B♭管とA管の比較

これほどの差になります。

A管はB♭管に比べて長いですが、楽器の中の太さ(内径)はどちらも同じなので、A管の方が少し抵抗のある吹奏感になります。

それが、A管独特の柔らかく、少し憂いを帯びたような音色の理由です。

どうしてB♭管とA管なのか

ではなぜ、B♭管とA管という2種類の楽器が作られたのでしょうか。

実は、最初からB♭管とA管に絞って作られたわけではありません。
クラリネットにはC管・D管・Es管・F管…などなど、様々な長さの楽器が存在していましたが、音色の問題やいろんな意味での扱いやすさなどから、B♭管とA管がスタンダードなクラリネットとして残ったようです。(Es管は今も特殊管として使われていますね)

ご存知のように、まず私達が出会うクラリネットは、B♭管ですし、多くの方がA管の必要性を感じることなく、クラリネットを演奏されていると思います。

そのような理由から「別にB♭管だけでいいじゃん。困らないし」と思われるかもしれませんが、実は半音違いのB♭管とA管が存在する大きな意味があります。

B♭管とA管の使い分け

クラリネット用ダブルケースに入ったB♭管とA管

吹奏楽をやっていて、特にオーケストラ曲の編曲ものだった場合、「♯だらけで、めちゃめちゃ大変なんだけど…」という経験はありませんか?

B♭管というのは、元々♭が2つついた調の楽器なので、それを打ち消すために♯を2つ背負っています。

と言われても、「は?どういうこと?」ですよね。

例えば、ピアノと同じドレミが鳴らせるフルートと比べてみましょう。
簡単に言うと、フルートが♯や♭が何もついていない楽譜を吹いていた時、同じ調で吹こうとするとB♭管は自動的に♯が2つ足されます。

ということは、フルートが♯2つならクラリネットは♯4つ、フルートが♯4つならクラリネットは♯6つ…と、とにかく♯がたくさんになるのです。

吹奏楽では、同じように♯を背負っている楽器が多いので、♯がたくさんな曲は案外少ないのですが、オーケストラでは容赦なく♯の海に放り込まれます。

そうなった時に、A管があると、途端に演奏が容易になります。

A管は、B♭管とは逆に元々♯3つの調の楽器ですので、♭を3つ背負っています。
フルートが♯2つならA管は♭1つ、フルートが♯4つならA管は♯1つで済みます。

実音楽器にとって♭が多い曲であればB♭管、♯が多い曲であればA管を吹けば、運指が楽になるのです。
(とはいえ、吹奏楽でA管を使うわけにはいきませんが)

A管独特の音色

しかし、オーケストラでA管が使われる理由は、それだけではありません。

先程も書いたように、A管はB♭管に比べると、ほんの少し哀愁のある柔らかな音が鳴りますので、作曲者がその部分にA管の音色が欲しくて持ち替えを指示されたり、曲全体を通してA管を指定されていることもあります。

また、ソロ曲でも、A管のために書かれた曲というのが、いくつもあります。
モーツァルトの『クラリネット協奏曲』や、シューマンの『幻想小曲集』が有名どころでしょうか。

少なくともこの2曲は、A管を持っていない人でも演奏できるように、B♭管用に移調された楽譜が出ていたりもしますが、指が非常に難しいのに加え、やはりB♭管の明るい響きだと、曲が本来持つ雰囲気や良さを出すのがとても難しくなります。

A管用に書かれた曲は、やはりA管で吹くのがベストですね。

機会があればぜひ体験を

オーケストラに入ったり、専門的にクラリネットを学んだりしないと、なかなか吹く機会のないA管ですが、B♭管と同じセッティングで同じように吹いても、いつもと違った音色が出て、とても興味深い楽器です。

もしチャンスがあれば、ぜひ吹いてみて下さいね。

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