東京クラリネット教室第9回発表会
2022年9月19日、東京クラリネット教室第9回発表会が行われました。
台風の影響が心配された三連休最終日。
講師含めスタッフの入り時間は晴れていたものの、リハーサルのために早めにいらした出演者の中には、土砂降りに当たってしまった方もいらっしゃったようです。
その後は、信じがたいほどの蒸し暑さになり、ちょっと用があって外に出た講師は驚愕!
リードなどに影響がないことを祈りましょう。
前回発表会が1月だったので、「いつもの半年ペースに比べて、今回はまだまだ時間がありますねー」なんて、ソロの方もアンサンブルの方もおっしゃっていたのですが、7月あたりからの時間の過ぎ方の加速度は恐ろしいほどでしたね。
しかしその分、皆様の仕上げのスイッチもバシッと入り、本番がとても楽しみです。
ホール争奪戦が激しい昨今、なかなか同じホールで発表会の開催ができませんが、今日の会場は講師も友人と自主公演で使ったことがある、「気持ち良く吹けるけど、響きすぎない」という絶妙な音響のホールです。
今までの練習の成果を存分に発揮して下さいね!
リハーサルをやることで知れること
今回も、開場まで充分な時間が取れたので、講師演奏のリハーサルのあとに、ソロの希望者12名とアンサンブル全グループのステージリハーサルを行いました。
前回の発表会同様、入退場の際の歩き方や礼の仕方も確認しながらのリハーサル。
発表会に慣れてきた方も多いので、皆さん堂々とされていて、こちらも落ち着いて見ていられます。
本番前のステージリハーサルは、
- 自分のその日の調子を知る
- 演奏曲の最終確認をする
- 一度緊張しておく
- 会場の様子を知る(音響・ステージからの見え方など)
など、たくさん得ることがあります。
もちろん、お好みによって「私はやらなくていいや」「むしろやらない方がいいかも…」という方もいらっしゃると思いますので、無理にとは言いませんが、「リハーサルをやることが本番での良い演奏につながるな」と感じる方は、リハーサルを含めた本番当日の流れというのを、徐々に身につけておくといいですね。
第一部
順調にリハーサルも終わり、いよいよ開演です!
枯葉(J.コスマ)
ソロにデュオにアンサンブルにと、実は毎回ご出演いただいている生徒さん。
今回は、第1回発表会で演奏した曲に再挑戦されました。
当時よりテンポも上がり、「こう吹きたい!」をよりしっかり表現できるようになっていて、積み重ねてきた年月を存分に感じられる演奏でしたね。
ご本人としても、納得の仕上がりだったことと思います。
いつもかっこいい曲を見つけてきて下さる方なので、また次の曲も楽しみにしています。
クラリネットとピアノのためのソナタ 第7番 第2・3楽章(X.ルフェーブル)
前回発表会で、第1楽章を演奏されたソナタの第2・3楽章を吹かれました。
いつも通り、かなり緊張されていたそうですが、そんなことは微塵も感じさせない、堂々とした立ち居振る舞いはさすがでしたね。
しっとりの第2楽章と軽やかな第3楽章をきっちり吹き分け、安心して聴いていられる演奏でした。
まだ挑戦したことのないジャンルもぜひ拝聴してみたいので、これからもソロ曲の練習を続けていって下さいね。
G線上のアリア(J.S.バッハ)
2回目のソロ挑戦の生徒さんです。
ご本人は気にされていなかったそうですが、全く休符のない曲で、相当ハードだったはずです。
クラリネットが生まれる前に書かれた曲なのもあり、レッスンではいろいろと苦労されていましたが、落ち着いた演奏は、聴いていた方々からもかなり好評でしたね。
ゆったりとした曲をいかに素敵に聞かせるか、という点を、これからもぜひ突き詰めていっていただきたいと思います。
ダンシングドール(M.マンガーニ)
かなり早めに演奏曲を決められていたのですが、あまりにお仕事が忙しすぎてレッスンになかなかいらっしゃれず、急遽曲を変更されて、発表会に臨まれました。
時間のない中での仕上げは大変だったかと思いますが、とても感情の乗った、熱い演奏をして下さいました。
今回演奏予定だった曲は、「次の発表会で演奏しますので!」とすでに宣言されていますので、そちらも楽しみにしていますね。
亜麻色の髪の乙女(C.A.ドビュッシー)
前回の日本の曲から一転、今回はフランスものに挑戦された生徒さん。
ゆったりした三拍子がなかなか掴めず、取り組み始めてすぐはかなり大変そうでしたが、慣れてからは「美しい旋律をどのように演奏するか」を考えての練習に打ち込まれていました。
本番では、お持ちのイメージをしっかり表現されて、聴いている方々の頭の中にも、たたずむ美しい乙女が浮かんだのではないでしょうか。
アンサンブルではバスクラリネットを吹かれているので、いつかバスクラリネットでのソロもチャレンジなさって下さいね。
糸(中島 みゆき)
いろいろな曲をよくご存知の生徒さんで、やりたい曲もたくさんあるご様子でしたが、今回はこちらの曲に落ち着かれました。
曲が決まったのは、発表会が近くなってからでしたが、のびやかに歌っているかのような演奏は、さすがでしたね。
ご事情で、次の発表会のご出演はしばらく先になってしまいますが、また一緒に演奏できる日を楽しみにしております。
I Got Rhythm(G.ガーシュウィン)
アンサンブルでアルトクラリネットを吹いてくれている生徒さんは、ソロ曲もアルトクラリネットで取り組まれました。
アルトクラリネット用のソロの楽譜というのは、探せばあるだろうけど…という状況なので、今回は同じ調のアルトサックスの楽譜をそのまま吹くことにされたのですが、クラリネットには難しい音の並びもあり、練習が大変だったかと思います。
本番は、苦手もクリアし、ノリノリの演奏を披露されました。
またB♭管でのソロも楽しみにしています。
目覚めよと呼ぶ声あり(J.S.バッハ)
こちらの生徒さんも、クラリネットソロ用に編曲された、いろいろな曲を発掘されるのがお得意な生徒さんで、今回は「『え、この曲何?』と、聴いている人達をびっくりさせたい」と、こちらの曲を選ばれました。
譜面はそこまで難しくないのですが、ちょっとでも雑念が入ったり、演奏している箇所と違うところに気が向いたりすると、急にがたついてしまう恐ろしい曲。
本番ならではの、ちょっとした動揺もありましたが、全体としては落ち着かれた演奏でした。
次の次の発表会の曲まですでに決定されているそうなので、そちらも楽しみにしています。
シチリアーノ(G.U.フォーレ)
数回の発表会出演経験はあるものの、ソロ演奏もホールでの演奏も実は初めて、という生徒さんです。
たまたま、大好きな曲の楽譜を講師が持っていたので、今回発表会に出ることにされたのですが、1ヶ月前のレッスンでも「やっぱり人前で吹くのは…」と心決まらず、ぎりぎりまで出演を悩まれていましたが、本番ではそんなことは感じさせない、堂々とした演奏を披露されました。
ピアノとの合わせでいつも引っかかってしまっていたところもばっちりでしたね。
ぜひまた次回も、お一人での演奏に挑戦なさってみて下さいね。
ワルツ(J.ブラームス)
前回発表会にご出演予定でしたが、急にご家庭の用事が入ってしまい、出演持ち越しとなってしまった生徒さんです。
三拍子や、何度も繰り返されるメロディーの表現の差、急に出てくる十六分音符や三連符など、挙げればどんどん出てくる難しいポイントに、レッスン中に頭を抱えていらっしゃることも多かったですが、本番では練習で積み重ねてきたことを、しっかり表現された演奏となりました。
次はどんな曲に挑戦されるのか、楽しみにしていますね。
アシタカとサン(久石 譲)
前回に続いて、2回目の出演の生徒さん。
初出演の時とはまた違うジャンルの曲に挑戦されました。
「ここはこんなシチュエーションが頭に浮かぶから、こんなふうに吹きたい」というイメージをしっかりお持ちで、それをきちんと表現された演奏となりました。
発表会後はわざわざ「次はこの曲をやります!」と講師に伝えに来て下さり、今後もますます楽しみです。
またのびのびとした演奏を聴かせていただけたらと思います。
A Million Dreams(B.パセク&J.ポール)
すっかり発表会常連となった生徒さんで、前回同様、元々が歌の曲に挑戦されました。
前半は子供が歌っていて、途中から大人(男性も女性も)、さらにデュオになる、という、「それ、どうやってクラリネットで表現したら…?」という難しい曲でしたが、ばっちり吹き分けされていましたね。
「演奏中に、映画のシーンがずっと頭の中に浮かんでいた」とのことで、しっかり曲の中に入り込んだ演奏となったようです。
次に選ばれる曲も、楽しみにしていますね。
生まれてはじめて(K.A.ロペス&R.ロペス)
以前にも増して、多忙な生活を送っている高校生です。
夏は、学校の部活でのコンクール出演もあり、そちらの曲と並行して、「音が細かくて、さらに高い音がたくさん」のこの曲を練習するのは、かなり大変だったと思います。
直前のレッスンで、まだ迷っている部分もありましたが、本番では元気いっぱいに吹き上げてくれました。
お勉強も大変かと思いますが、ぜひまた大好きな曲をクラリネットで演奏する楽しみを、味わって下さいね。
クラリネット協奏曲第1番 第1楽章(C.M.v.ウェーバー)
無事に受験を終え、音大に進学した大学生です。
今回は、今まさにソロのコンクールのために練習している曲を、演奏されました。
クラリネットを専門に勉強している人なら、ほぼ全員が通るであろうこの曲。
美しさと技巧的な部分、両方を求められる楽曲ですが、そこは以前から得意としているところなので、安定した演奏を聴かせてくれました。
さらに抑揚に磨きをかけ、コンクールでは「内に秘めた情熱」も、表現してきて下さいね。
第二部
発表会後半は、アンサンブルです。
夏の終りのハーモニー(玉置 浩二)
まずは初級者アンサンブルから。
ここ最近で人数も増え、結束も増した皆さん。
男性デュオの曲に挑戦されました。
歌の曲というのは、「え、譜面になると、こんな複雑なリズムになるの?」ということも多く、また、デュオということで、その複雑なリズムをぴったり揃えなければならないため、皆さん苦労されていましたが、本番では歌っているように演奏されていましたね。
早速次の曲も決まっていますので、さらにアンサンブル力を向上していきましょう。
うるわしき夢(福田 洋介)
2番目は、中級者アンサンブルです。
最後を除いて、8分の6拍子と8分の3拍子で書かれている曲で、「頭の中でのカウントの仕方を、どう統一するか」が最重要課題の曲。
人数も多いのでなかなか大変だったと思いますが、自主練習の甲斐もあって、本番ではちょっと不思議な世界観も表現されていました。
次回は吹奏楽曲に挑戦されるとのことで、また別の大変さがあると思いますが、また楽しく演奏していきましょう。
スペイン(C.コリア)
魔女の宅急便メドレー(久石 譲・荒井 由実)
第二部最後は、上級者アンサンブルです。
全く違うジャンルの曲を2曲吹かれましたが、ばしっと切り替えて演奏されていたのは、さすがでしたね。
今回は、軽いソロ回しのような要素もあり、担当されている方達は大変そうでしたが、本番ではかっこよく決まり、ほっと一安心だったのではないでしょうか。
2曲目の前には、客席にちょっとしたほっこりを届けて下さって、映画の世界観のままほんわかした演奏となりました。
上級者アンサンブルも、次の曲は吹奏楽曲ということで、こちらも楽しみにしています。
講師演奏
皆さんの素晴らしい演奏のあとは、講師演奏です。
伴奏は気心知れた本野洋子さんにお願いし、今回はS.V.ラフマニノフ作曲の『ヴォカリーズ』を演奏しました。
実はこの曲、普段私達が吹いているB♭クラリネットではなく、少しだけ長いA管で吹いたのですが、皆さん気づかれたでしょうか?
「なんか違う…」と違和感を持たれていた方もいらしたようです。
B♭管とA管は、内径が同じだけれど、A管の方が長いので、吹いていて少し抵抗感があり、音色は暗いような、なんだか切ない響きがします。
『ヴォカリーズ』の旋律自体もちょっと憂いがありますので、A管の音色と相まって、切なさをお届けできていたら嬉しいです。
皆さんパワーアップ中!
今回は、ソロ・アンサンブル合わせて、25名の方にご出演いただきました。
おこがましい言い方ではありますが、皆さんの成長・上達が目に見えて感じられて、講師としても嬉しい時間を過ごすことができました。
できることが増えると、クラリネットはさらに楽しくなります。
具体的な本番の目標を持つことで、練習時間の確保や練習の仕方、また、気持ちにも変化が表れてきますので、次回もたくさんの方にご出演いただけたらと思っています。
迷われている方、ぜひ勇気を出して、一歩踏み出してみて下さいね。
ご出演の皆様、ご来場いただいた皆様、スタッフの方々、今回もありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します!