東京クラリネット教室第8回発表会
2022年1月9日、東京クラリネット教室第8回発表会が行われました。
しばらく冷たい空気の日々が続いていましたが、ほんの少し寒さがゆるんだのは、皆さんの行いの良さですね。
前回の発表会から半年、あっという間に時が過ぎていきますが、出演者の皆さんはお忙しい合間を縫って、今日に向けて頑張っていらっしゃいました。
残念ながら、ホールの都合でアンサンブルの発表の場は別に設けることとなりましたが、今回もソロに初挑戦・再挑戦して下さった方が多くいるので、全部で16組演奏されます。
練習の成果を存分に発揮して、出演者の方々もお客様も「楽しかった!」と思える会にしてきましょう。
吹き始める前にちょっと気を回すといいこと
今回の発表会も、ピアノの調律が終わったら講師演奏のリハーサルをやって、その後は希望者の皆さんのリハーサルです。
今回は、15組の方がリハーサルを希望されました。
もちろん、演奏のリハーサルがメインではありますが、今回はさらにその方の出番を輝かせるための一工夫もリハーサルしていただきました。
それは、演奏前後の(特に前)の立ち居振る舞いです。
- 姿勢よく入退場
- 速すぎず遅すぎず歩く
- お辞儀をする際は、必ず止まる瞬間を作る
などの点に気をつけると、お客様が受ける印象がとても良くなり、演奏に期待を持ってもらえます。
どうしても、緊張から背が丸まったり、動きがせせこましくなったり、入場した流れでぺこりと頭を下げてしまったり、ちょこちょことした落ち着きなく見える行動をとってしまいがちですが、それは自分が落ち着く機会も逃してしまいます。
「常に堂々と」を心がけましょう。
また、先述の通り、お辞儀の時には「一旦止まる」ことが大切です。
入場して譜面台の横に立った時・頭を下げている最中・正面に向き直った時、それぞれの動作の際に必ずストップするようにしましょう。
それだけで見映えが良くなり、お客様の意識をこちらに向けられますので、「なんだかソロ演奏って恥ずかしい…」とひょこっと頭を下げてすぐ演奏に入る、なんてことのないようにしていきましょうね。
ご希望者のリハーサルが無事に終わったら、いよいよ本番です。
第一部
風之舞(福田 洋介)
「どうしてもこの曲を演奏してみたかった」という生徒さんが、クラリネット2本とピアノの編成への編曲を、作曲者ご本人に依頼して実現した演奏です。
「二重奏などの機会があったら、ぜひやってみたい」とおっしゃっていたもうお一方をご紹介して、今回のメンバーでの演奏となりました。
元が吹奏楽曲ということで、役割がころころと変わり大忙しの曲でしたが、カラフルで素敵な表現ができていましたね。
またそれぞれのソロ演奏も楽しみにしています。
クラリネットとピアノのためのソナタ 第7番 第1楽章(X.ルフェーブル)
「こういう曲をきちんと吹けたらかっこいいですよね」と、シンプルゆえの難しさのある曲を選ばれて、挑戦されました。
そのようにお見受けしないのですが、いつもとても緊張されるとおっしゃっていたので、なるべく早い出番にしたことと、先述の「ゆったりしたお辞儀」を実践されたところ、落ち着いて吹くことができたそうで、ご本人も納得の演奏となりました。
表情を出すのが難しい曲でしたが、練習してきた成果がばっちり発揮できていましたね。
次回は、同じ曲の第2楽章・第3楽章を演奏されるとのことで、そちらも楽しみです。
トロイメライ(R.A.シューマン)
クラリネットを始められて1年半ほどの生徒さん。
意を決して初めての発表会ご出演でした。
楽譜をぱっと見ると、簡単にできそうに思えるけど、実はクラリネットにとってはとても嫌な運指の曲で、練習では苦労されたようですが、「音楽的に演奏しよう!」という気持ちの溢れた演奏となりました。
初出演とは思えない堂々とした様子も、素晴らしかったですね。
今後もいろいろと挑戦していただいて、演奏にどんどん磨きをかけていただきたいと思います。
愛の挨拶(E.W.エルガー)
こちらの生徒さんも、初めてのご出演です。
初級者アンサンブルに参加されていて、「アンサンブルの発表の場が先になるのなら、新たな目標としてソロに挑戦します」とのことで、急遽決めたソロ演奏だったのですが、アンサンブルも1月中に発表の場が設けられてびっくり、な中の本番となりました。
ソロとアンサンブルの両方の曲を練習されるのは大変だったと思いますが、日々こつこつ練習を積み重ねていらっしゃる成果が、しっかり出ていましたね。
次に挑戦される曲も楽しみにしています。
ホール・ニュー・ワールド(A.メンケン)
前回に引き続きの出演となった中学生です。
第7回発表会に向けての練習は、初めてのソロということもあって手探り感がありましたが、一度本番を経た今回は、「どうやって練習したら、思っていることを表現して吹けるようになるか」を考えて練習できるようになりましたね。
本番でも、「こんなふうに演奏したい!」というのが伝わってくる、気持ちのこもった演奏をしてくれました。
もうすぐ受験生になるので、次の発表会に出てもらえるかはわかりませんが、また新たな目標を作って、一緒に頑張っていきましょう。
いのちの名前(久石 譲)
初めての発表会ご出演の中学生です。
部活動でも合奏をやったり、アンサンブルをやったりと忙しい中、ソロ演奏にもチャレンジしてくれました。
映画は観たことがないとのことで、元の曲のシチュエーションに引っ張られることなく、しっかり自分のイメージを持った演奏となりましたね。
ご本人も吹いていて気持ち良かったと思いますが、聴いている皆さんの頭の中にも、情景が浮かんでくる演奏だったと思います。
これから、さらに部活も忙しいと思いますが、また次の曲にも挑戦して下さいね。
夢はひそかに(M.デイヴィッド・A.ホフマン・J.リヴィングストン)
発表会初出演の高校生です。
しばらく学校が忙しかったようで、レッスンはお休みされていましたが、今回の発表会のご案内をしたところ「出てみたいです!」と言ってくれて、出演されることになりました。
その後もなかなか練習時間が取れなかったようですが、その「発表会に出たい!」の気持ちで、頑張って練習してくれました。
難しいアレンジの楽譜だったので、練習は大変だったと思いますが、本番は楽しく演奏できましたね。
春からは新生活で、しばらくまたお忙しいかもしれませんが、また一緒に演奏しましょうね。
美女と野獣(A.メンケン)
2回目の出演の生徒さんです。
年末年始がとてもお忙しくなってしまい、予定されていた練習ができなかったとのことで、当日は少し焦ったご様子でしたが、いざ本番が始まってみれば、今回も心のこもった演奏をして下さいました。
前回もゆったり演奏されていましたが、2回目の余裕も感じられ、より音楽的な仕上がりとなりましたね。
安定度も増してきましたので、まだまだお忙しい日々かと思いますが、また次の本番に向けて頑張っていただけたらと思います。
次にやりたい曲も考えておいて下さいね。
メモリーズ・オブ・ユー(E.ブレイク)
二重奏や三重奏、中級者アンサンブルでの発表会出演はありましたが、実はソロ演奏は初めての生徒さん。
ジャズ曲を選ばれました。
最初にご自身で準備された楽譜ではなく、難しいアレンジに挑戦されたいとのことで、講師が持っていた楽譜をお渡ししましたが、これがなかなかのややこしさ。
原曲のメロディーが見えないアレンジに、かなりはまりこんでいるご様子でしたが、本番ではいい意味で開き直って演奏できていましたね。
またやりたい曲を見つけて、ソロ演奏に挑戦していただくのを楽しみにしています。
第二部
花は咲く(菅野 よう子)
こちらの生徒さんも、初めての発表会出演でした。
前回は、アンサンブルだけの参加で、ソロステージは客席にいらしたのですが、その時に大いに感化されたそうで、思いきってソロ演奏に挑戦されました。
「いつかソロを吹く時はこの曲を」と決めてらしたとのことで、気持ちがたっぷりこもった演奏を聴かせて下さいました。
使われていた楽譜のアレンジが難しく、強弱などにも苦労されていましたが、初本番は良い演奏になりましたね。
今回のソロ演奏の練習で、かなり演奏が変わられたと思いますので、これからも楽しみにしています。
世界の約束(木村 弓)
前回に引き続きご出演の生徒さんです。
10月に楽器も新調され、奏でる音楽により幅も出ましたね。
ご本人的には悔しい演奏だったそうですが、聴いている側は全くそんなことなく、想いの乗った素敵な演奏でしたよ。
元が歌の曲は、クラリネットで吹くとどうしてものっぺりしがちなのですが、その部分もうまくクリアできて、「歌っているように聞こえるように吹く」ことができていました。
きっと次の曲ももう探されていると思うので、どんな曲を選ばれるか楽しみに待っていますね。
アンダンテ・カンタービレ(P.I.チャイコフスキー)
初めての発表会ご出演の生徒さんです。
元々は、音が小さいというお悩みを持たれて教室に入会されたのですが、すぐにそちらも克服され、ソロに挑戦されることになりました。
曲名の「カンタービレ(歌うように)」の通り、たっぷりと息を入れて歌い込んだ、美しい演奏を聴かせて下さいました。
吹奏楽団にも入られていて、そちらの曲の練習も大変だと思いますが、またソロ演奏にも挑戦なさって下さいね。
スラブの歌(J.Ed.バラ)
前回は、お仕事がお忙しすぎてソロ演奏での出演は見送られた生徒さんです。
ここのところ、めきめきと表現力の幅が広がってきて、本番での演奏も、頭に浮かべていらっしゃる曲のイメージが伝わってくる良い演奏となりました。
ご本人は、自己評価がとても厳しく、レッスンで素敵に演奏されても、いつも「うーん…」という感じの反応をされていますが、発表会の録音を聴かれて「思ってたよりも曲になっていた」との感想をいただきました。
「思ってたよりも」どころではなく、本当に音楽的に演奏なさっていましたので、また次に向けて、ご自身には少し甘めに頑張っていきましょうね。
『眠れる森の美女』より ワルツ(P.I.チャイコフスキー)
交響曲第6番 第2楽章(P.I.チャイコフスキー)
「アンサンブルで発表会に出るならソロも出ておこうかな」と、2回前からソロ演奏でも出演されている生徒さんです。
オーケストラ曲をクラリネットソロで演奏するのは大変だったと思いますが、「三拍子や変拍子が好き」とのことで、レッスンではとても楽しげに吹かれていましたね。
本番では、今までにない、ちょっとしたアクシデントもありましたが、それでも楽しく吹いていただけたようで、ほっと一安心です。
すでに次の曲にも目を向けていただいているようなので、今度はどんな曲を選ばれるのか、楽しみです。
クラリネットのための30の練習曲より 22番 ト長調(E.カヴァリーニ)
あっという間に受験生になった高校生です。
来月には大学入試を控えているので、そこでの課題曲を演奏してくれました。
ピアノ伴奏なしで、1人で人前で吹くことは心細かったと思いますが、そんなことはみじんも感じさせない、堂々とした演奏でした。
発表会2日前にレッスンにいらしたのですが、そこで私がお話したことをクリアしていただけではなく、そこからさらにパワーアップした演奏になっていたのは、本当に驚きました。
そのペースで伸びていって、大学入試では納得の演奏をしてきて下さいね。
変奏曲とオマージュより抜粋(A.マルゴニ)
グランドデュオコンチェルタント 第3楽章(C.M.v.ウェーバー)
卒業試験を約10日後に控えた大学生です。
本番の様子を掴むために、ドレスでの演奏に挑戦されました。
私の友人である齋藤利理子さん(ピアノ)をご紹介しての演奏となりましたが、息もぴったりで、実に華やかな演奏でしたね。
元々テクニカルな演奏を得意とされていましたが、大学生活4年間で、音楽的な部分も強化されていて、勉強されてきたことが存分に表現されていました。
春からはがらっと生活が変わりますが、もちろんクラリネットは続けていって下さいね。
講師演奏
皆さんの熱演で、すっかり耳も満足の時間を過ごしましたが、ここで講師演奏です。
今回は、大学4年生の前期試験で吹き、その後友人とのジョイントリサイタルでも演奏した、ブラームスの『クラリネットソナタ Op.120-1 第1楽章』を演奏しました。
ピアニストは、当時も弾いてくれた本野洋子さんです。
大学時代の恩師いわく「この曲のテーマは人生」だそうで、葛藤や怒り、希望、それを失った時の絶望など、内なる心の動きが巧みに音として紡ぎ上げられた、大好きな曲です。
ピアノが本当に大変な曲で、本野さんには無理を言いましたが、熱い演奏に突き動かされ、私も曲に入り込んで演奏することができました。
この熱さは、客席にいた皆様にもお届けできたのではないでしょうか。
またいつか全楽章演奏してみたいものです。
「自分だからできる演奏」を目指そう
たくさんの方にご出演いただき、おかげさまで充実した発表会になりました。
初出演の生徒さんが6名もいらっしゃったのもの、嬉しい限りです。
以前から、ソロ曲を演奏される方にはお話してきましたが、「その方だからできる演奏」というのが、とても大切です。
音間違いがなく、ただきれいなだけの演奏であれば、例えばコンピューターにポチポチと音を打ち込んで再生すれば良いわけで、そうではなく「生きた音楽」「その人がやる意味」ということを、生徒の皆さんには大切にしていただきたいと常々考えています。
「ちょっと音間違えちゃった」とか、そんなことは結構どうでも良いことです。(もちろん、間違えないに越したことはありませんが)
それよりも「この音楽からこんな印象を受けたから、こうやって表現してみよう」「こういう感情で演奏したいんだよね」という部分は、その奏者にしかできないことですので、そちらに重きを置いて、ぜひ音楽を楽しんでいって下さい。
まだまだ世間が落ち着かない日々で、さらにアンサンブル参加者は2週後に本番を控えていますので、ぱーっとした気分にはなりにくいですが、次回発表会も皆さんと楽しい時間が過ごせることを願っています。
ご出演の皆様、ご来場いただいた皆様、スタッフの方々、今回もありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。