東京クラリネット教室第14回発表会

2025年1月26日、東京クラリネット教室第14回発表会が行われました。
夏の発表会からあっという間の5ヶ月半でしたが、今回はソロ・アンサンブル合わせて33名の生徒さんにご出演いただきました。
いつにも増してお客様にお越しいただき、中には当教室の発表会を気に入って下さって、何度も足を運んで下さる方もいらして、開催している側としては大変ありがたく、嬉しい限りです。
今回の会場は、昨年2月にも発表会を行ったホールなので、出演が2回目以降の方はどことなく余裕を感じますね。
出演者の皆さんには、練習の成果をしっかり披露していただけたらと思います!
リハーサルの臨み方を考える

第7回発表会から始めた、希望者のみのソロ演奏のリハーサル。
持ち時間は1人あたり5分です。
曲を通すのか部分的にチェックするのか、他にも入退場やお辞儀、チューニングの仕方など、気になることはそれぞれあると思いますので、いざリハーサルの時に慌てないよう、自分に何が必要かを、あらかじめ考えておくようにしましょう。
リハーサルで良いイメージを掴んでおけると、本番も気分良く演奏することができますし、恐ろしいことにその逆もあります。
「どうしたらいいかわからない…」という方は、レッスンでご相談いただければ、合ったやり方をご提案しますので、「当日なんとなく流れで」ではなく、本番につながる良いリハーサルができるようにしたいですね。
第一部
ソロのリハーサル・アンサンブルのリハーサルともに、ちょっと押し気味で、終了が開場のギリギリになってしまいましたが、出演者の皆さんは準備万端なので無事に発表会開演です。

風之舞(福田 洋介)
この曲が好きで、作曲家ご本人に頼んでクラリネット2本+ピアノに編曲してもらった、という生徒さんが、3年ぶりに「もう1つのパートを吹きたい」と、以前とは別の生徒さんと一緒に出演されることになりました。
二重奏は、人数が多いアンサンブルよりも、一人一人の吹き方の違いが際立ちますし、イメージやテンポ感を一緒にするのも大変だったかと思います。
早い段階で、ピアノとも合わせ始め、まるで合奏を作り上げる作業のようでしたね。
テンポ変化も多く、テンポキープも難しい音型が多かったですが、本番は熱さと冷静さを兼ね備えた演奏となりました。
またソロも二重奏も聞かせて下さいね。

ロマンツァ(M.マンガーニ)
アンサンブルでは発表会に出演して下さっていましたが、ソロはちょっとお久しぶりの生徒さんです。
甘いタイトルの曲ですが「全然そういうイメージがないんです!」と、情熱と切なさを併せ持ったストーリーを聞かせて下さり、それを存分に表した演奏をされました。
この作曲家によく見られる「楽譜の見た目よりも、吹くと難しい」という特徴に翻弄され、何度か「今から曲変えられないですよね?」と弱気な発言もありましたが、本番ではカデンツァもきちんと自分のものにされていましたね。
残念ながら、次の発表会の日はお仕事とのことで、ソロもアンサンブルもお休みになってしまいますが、また熱い曲を見つけて、切々と歌い上げていただけたらと思います。

シチリアーノ(G.U.フォーレ)
ここ数回は、ソロにアンサンブルにとご出演いただいている生徒さんです。
多くの方が演奏してみたいとおっしゃる『シチリアーノ』ですが、やってみると実は思っているより難しく、流れるような演奏と正確なリズムの両立、強弱の適切なつけ方に、やはり苦労されることとなりました。
とはいえ、ゆったりとした曲を歌い込むことは、今までもやってきていましたし、その点はむしろお得意でしたので、早々に仕上がり、本番でもこの曲の世界観は存分に表現されていたと思います。
強弱のコントロールも良かったですね。
こちらの生徒さんも、夏の発表会はご都合が悪くお休みになりますが、次はどんな曲を選ばれるのか、楽しみにしています。

ビビデバ(ツミキ)
前回のバッハから、がらっと変えた曲を選ばれた生徒さんです。
元は歌の曲で、音源を聞いてもそこまで速く感じないのに、クラリネットだとめちゃめちゃテンポに追われる、という、不思議で難しい曲でした。
この曲に限らず、歌(ポップス系)が原曲のものを楽譜に起こすと、信じられないくらい十六分音符やシンコペーションだらけになり、それを普段演奏している曲のようにかちっと吹いてしまうと「なんか違う…」になってしまいがちなのですが、お好きな曲なだけあり、きっかりはめすぎず歌の柔軟性を上手に吹かれましたね。
次の発表会の曲もすでに決定され、これまた今回から打って変わって、という感じの選曲をされていますので、表現の幅をどんどんと広げていっていただけたらと思っています。

クロリスに(R.アーン)
初出演の生徒さんです。
「森麻季さんが歌っているこの曲が大好き」ということで、選ばれました。
拍子は2分の4拍子、♯がたくさん(クラリネットだと6コ)、と、楽譜を見ただけで怯んでしまいそうな曲でしたが、こつこつと練習を重ねられ、のびやかな演奏を聞かせて下さいました。
ご本人的には、気になることもあったようですが、初舞台とは思えないくらい、堂々とされていましたね。
今回、1つの曲を仕上げるにあたって、運指であったり音楽的な演奏であったり、いろいろなことを考えて練習され、ご自身でも成長を感じられたと思いますので、その経験を今後のクラリネット演奏に生かしていって下さい。
次の発表会出演や、新しいチャレンジも楽しみにしております。

セレナーデ(F.P.シューベルト)
前回発表会にもご出演いただく予定だったものの、思うように練習時間が取れないとのことで、1年ぶりのご出演となった生徒さんです。
常にご自身の課題を探していらっしゃるので、「楽譜は簡単。仕上げるのは大変」なこちらの曲を選び、挑戦していただきました。
歌曲をクラリネットで仕上げることの難しさ、音符の種類による吹き分けなど、細かい部分に苦闘されているご様子でしたが、その大変さすらも楽しまれているお姿は、さすがだなぁと拝見していました。
本番でも、やりたいことをいかに表現するか、心を込めた演奏を聞かせて下さいました。
本番の出来もしっかり分析されて、次につなげる準備をすでにされているようですので、次回も楽しみにしております。

アシタカせっ記(久石 譲)
こちらの生徒さんも、1年ぶりのご出演です。
練習できない期間ができてしまうことが、昨年春の時点でわかられていたので、今回の発表会に照準を合わせて、練習をされてきました。
有名なメロディーだけではなく、いろいろと凝ったアレンジの楽譜を選ばれ、そこまで長くないものの、ボリュームが感じられる1曲でしたので、曲ごとに吹き分けていくのは大変な作業だったと思いますが、細かに積み重ねてきた練習の成果がきちんと形になりましたね。
曲調をしっかり考えて吹かれていたので、この曲をよくご存知の方々ではなくても、それぞれの物語のシーンが浮かぶような演奏でした。
次に選ばれるのがどんな曲になるのか、楽しみにしています。

アルバムの綴り(M.マンガーニ)
前回はジブリ作品のジャズアレンジに挑戦された生徒さんが、今回はクラリネットのオリジナル作品に取り組まれました。
「楽譜が一見簡単に見えるだけに、仕上げるのが難しい」という1曲でしたが、「どのように吹くか」「どう吹きたいのか」を常に考えて練習に臨まれました。
ピアノとのやりとりも、今まで演奏されてきた曲にはない部分で、そこがおもしろくもあり、難しくもあり、でしたね。
発表会を経るごとに、表現力の幅もかなり広がられているので、演奏されていても楽しかったのではないかと思います。
クラシック系とジャズ系、どちらにもご興味がおありのようなので、次回の発表会はジャズでしょうか?
曲が決まられるのを楽しみにしています。

G線上のアリア(J.S.バッハ)
初めて発表会にご出演の生徒さんです。
前回発表会直後に「次は出ます!」と宣言して下さり、曲も早々に決定されました。
この曲は、以前も演奏された生徒さんがいらっしゃいますが、休符が全くなく、管楽器奏者には本当に大変な曲で(原曲は弦楽器なので問題なし)、かつゆっくりなのに流れるように吹かねばならない、「聴いているのと、吹いているのでは大違い」な一曲なのですが、たっぷりと吹き上げられました。
本番ならではの緊張もあり、少し息が苦しくなられたかなと感じられた瞬間もありましたが、それを演奏に出すことなく、最後まで吹き切られ、初めての本番とは思えない良い出来でしたね。
楽団との両立は大変かと思いますが、またソロ曲への挑戦、お待ちしています。

愛の挨拶(E.W.エルガー)
すっかり発表会常連となられた生徒さんです。
バンドアンサンブルと両立されながら、ソロも様々なジャンルに挑戦されていて、今回は久しぶりのクラシック曲に取り組まれました。
聴いていると優雅だけど、吹いてみるとクラリネットには難しい運指だったりして、なめらかな演奏に苦労されていましたが、舞台に立たれるのは慣れているのもあり、本番では堂々と吹かれました。
よく演奏されるお得意の歌ものと違って、歌詞がない分、奏者の想像力が試される曲でしたが、ストーリーを考え、「ここはこんなふうに吹きたい」という具体的なイメージもお持ちでしたので、音楽的な演奏となりましたね。
これからもいろいろな曲を演奏していって下さいね。

クラリネットポルカ(ポーランド民謡)
2回目の出演の大学生です。
前回はジブリ作品を演奏され、今回もいろいろとおもしろい選曲をされていたのですが、最終的に「クラリネットの定番」とも言える曲に決定されました。
教室の空き時間にやっているスタジオレンタルを利用して、大学の授業の合間にしょっちゅう練習しにきてくれていたのですが、練習内容を工夫されていたり、どんどん上達されていくのがドア越しにもわかり、なんだか頼もしいなぁと、嬉しく聴かせてもらっていました。
発表会でも、その練習の成果をしっかり発揮して、安定した演奏を披露してくれましたね。
一味違う選曲眼をお持ちなので、次の候補曲も楽しみにしています。

クラリネットソナタより 第4楽章(C.C.サン=サーンス)
こちらも、2回目の出演の生徒さんです。
前回演奏したクラリネットソナタの最終楽章に挑戦されました。
この楽章は展開が目まぐるしく、曲のスタートは十六分音符の連続、と、音楽的にも技術的にも、難易度が第1楽章とは比べものにならないのですが(もちろん第1楽章もきちんと仕上げるのは大変ですが)、ピアノ伴奏にも「こうやって弾いて下さい」と要望を下さるくらい、吹き込まれて本番に臨まれました。
「本番は速くなってしまうと思うので」と、ご自分の傾向も分析された上で練習を積まれたので、心地良いテンポでの仕上がりになりましたね。
次の発表会に向けての選曲も、すでにされていらっしゃいますので、そちらも楽しみにしています。

コンチェルティーノ(C.M.v.ウェーバー)
中学1年生の時に出演してくれた生徒さんが高校生になり、「本格的に受験モードに入る前に」と、音大入試にも使われる曲を演奏されました。
音楽的にも技術的にも、様々な要素が織り込まれている曲で(さすが入試に使われる曲です)、きちんと吹くのは本当に大変なのですが、実は中2の時に一度仕上げて、コンクールでも吹いてるとのこと。
「どう吹きたいか」を明確に持った、意思の感じられる演奏となりました。
とてもよく吹かれていたと思うのですが、ご本人的には想像以上に緊張して、うまくいかなかったとのこと。
晴れて受験が終わった暁には、ぜひまた納得の行く演奏をしに、舞台に戻ってきて下さいね。
第二部
第二部は、アンサンブルクラスの演奏です。

アイネクライネナハトムジークより 第2・第3楽章(W.A.モーツァルト)
最初は初級者アンサンブルです。
前回、お知り合いの演奏を聴きにいらした方が「一緒に吹きたい!」と参加して下さり、新たなメンバーを迎えることができました。
とはいえ、長期でお休みの方が2人いらっしゃるため、引き続きお手伝いもお願いしてのアンサンブルとなりました。
ゆったりした2楽章と踊りの曲の3楽章の切り換え、1つの楽章の中でも例えばフォルテの吹き分けが必要、などなかなか難易度の高い曲でしたが、それをしっかり表現しようとされていましたね。
また新たに参加表明をいただきましたので、みんなでさらにパワーアップしていきましょう。

歌劇『魔笛』より 4つのアリア(W.A.モーツァルト)
中級者アンサンブル最初の演奏は、チームぞうさんです。
いくつか挙げていただいた曲の候補から、今までとはちょっと練習課題が異なるこちらの曲に決定しました。
指回しの難しさに加え、モーツァルトのきっちりさ、さらにオペラの雰囲気の表現も求められる曲でしたので、個人練習も合わせるのも大変だったかと思いますが、本番は意志疎通のできた良い演奏となりました。
次の発表会は、少しメンバーが変わりますが、また新たな課題克服に向けて曲を選ばれていますので、さらに飛躍すべく頑張っていって下さい。

猫と少女と水玉模様(駒井 一輝)
中級者アンサンブル2番目は、チームかるがもです。
固定のバスクラ奏者がいないので、お手伝いをお願いして、「楽譜の見た目や、聞こえているよりもずっと難しい曲」というのが第一印象の曲に挑戦されました。
括ってしまうのもあれなんですが、「かっこよく聞こえる邦人作品は難しい」というイメージを、さらに強固にするような曲でしたね。
変拍子の嵐から始まり、合わせるのが難しい複雑なワルツが続く作りでしたが、本番はよく吹き切られたと思います。
次回も邦人作品に決まっていますので、今回の経験をしっかり生かして、またかっこよく聞かせて下さいね。

エル・カミーノ・レアル(A.リード)
中級者アンサンブル最後のクラスは、チームくらげです。
以前、同じ曲を上級者アンサンブルが吹かれていた時に「私達も、1年越しでやりたい」とリクエスト下さった曲で、結局は1年以上経ってしまいましたが、ついに実現されました。
吹奏楽の10何パートを5パートにまとめている、という時点でハードなのに、十六分音符満載で、縦の線を揃える作業がとても大変だったと思います。
本番はいつになくノリよく吹けていましたので、また「頑張ればできるかも」の曲に挑戦なさってみて下さい。

ルーマニア民族舞曲(B.バルトーク)
アンサンブルクラス最後の演奏は、上級者アンサンブルです。
こちらのクラスでは、今までで最大人数の8名で演奏されました。
過去のように、人数より少ないパートの楽譜を重ねて吹く、という形ではなく、全員違うパートの正真正銘の八重奏。
しかも民族舞曲ということで、多少テンポが揺れたり、伴奏に特徴があったりとかなりの難曲でしたが、本番では8名の気持ちぴったりの演奏となりました。
次回は少し人数が減ってしまいそうですが、また分厚い演奏を期待しております。
講師演奏
皆様の素敵な演奏を堪能していただいたあとは、講師演奏です。

今回も齋藤 利理子さんに伴奏をお願いして、W.A.モーツァルト作曲『クラリネット協奏曲 イ長調 K.622より 第3楽章』を演奏しました。
第12回発表会から、1楽章ずつ演奏してきましたが、今回で最終楽章。
3楽章通してA管(あーかん)で演奏されます。
今回も、アンサンブルでモーツァルトの曲を演奏された方々がいらっしゃいましたが、モーツァルトはシンプルゆえに難しいのが特徴ですね。
音の並びも突飛なものはないので、その分基礎力が求められ、音階練習などを真面目にやってきたかが顕著に表れてしまうのがモーツァルトです。(この曲に限らず)
そういう難しさがあるのと、その割にのんきな雰囲気に感じられる曲が苦手で、正直なところモーツァルトは昔から好きじゃなかったのですが、今回改めて演奏してみると、なんとなくニコニコしたくなって、わくわくする曲だなぁと感じられました。
演奏する私に、技術と気持ちの余裕が出てきたのかもしれませんね。
そんなわけで、細かな要望に対応してくれる齋藤さんの伴奏のおかげで、モーツァルトと多少気持ちが通じたような気がします。
お客様にも好評だったようで、一安心。
また機会があったら、さらに掘り下げて取り組みたいと思います。
よりクラリネットを楽しむために
「発表会の客席にいらっしゃる方が、次回は舞台の上に」と、毎回のように願っているわけですが、今回はソロで2名、アンサンブルで1名、前回のお客様が出演者として参加して下さいました。
その方達も含め、発表会に向けて、短い方だと約3ヶ月、長い方だと1年以上かけて曲を仕上げているわけですが、最初のうちは音を追うだけで一生懸命だったところから、技術的な表現(アーティキュレーションや強弱)を身につけ、音楽的な演奏を追求し、何をイメージし伝えていくかを考えてクラリネットを吹く、という経験は、飛躍的な上達につながります。
楽譜に書いてある音をただ鳴らしていくだけでは、曲として成立しない、と気づけるだけでも、大きな成長です。
発表会出演という具体的な目標を設定することで、自分が選んだ曲と向き合い、仕上げることは、よりクラリネットを楽しんでいくための一つの手段でもありますので、「やってみようかな」とちらりとでも思った方には、ぜひ挑戦していただきたいと思います。
途中で「次の発表会までに仕上げるのは無理かも」と思った場合は、その次の発表会に目標を変更することもできますので、気軽に取り組んでみて下さいね。
積極的なご参加、お待ちしています!
ご出演の皆様、ご来場いただいた皆様、スタッフの方々、今回もありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。
