調性記号と臨時記号を正しく知ろう
もう12月。
すっかり冬の澄んだ空気になりましたが、とはいえ例年よりは暖かい日が多い気がしますね。
今は、アンサンブルコンテストに向けて頑張っている方も多いかと思います。
大人数での合奏と違うことも多く、戸惑うことも多々あるかと思うのですが、アンサンブルでの経験は、必ず吹奏楽での演奏精度向上につながりますので、周囲にしっかりアンテナを張って、仕上げに向けて取り組んでいって下さい。
もし、進め方に迷った時などは、東京クラリネット教室のアンサンブル記事も、ぜひお役立て下さいね。
さて、何か曲に取り組む時に、大抵は「調性記号」と「臨時記号」が出てきます。
当たり前のように演奏しているはずですが、ふとした瞬間に「あれ、これって何の音吹くんだっけ…」と迷われている生徒さんもよくいらっしゃるので、曖昧になっている点を、今回ははっきりさせていきましょう。
調性記号と臨時記号とは
調性記号と臨時記号、どちらも#や♭のことを指しますが、全く意味合いが違いますので、きちんと違いを知っておきましょう。
ざっくり言うと、調性記号は「この音に#(もしくは♭)をつけた調ですよ!」と、最初に(もしくは曲の途中から)示す記号です。
一方、臨時記号というのは、どんな調の曲かに関わらず、個々の音符を変化させる記号です。
調性記号にはありませんが、臨時記号の場合は「ナチュラル」も出てくることがあります。
調性記号と臨時記号を正しく知ろう
それでは、もう少し詳しく調性記号と臨時記号について、お話していきましょう。
調性記号
まず調性記号ですが、これは「調号」と略して使うことの方が多いかもしれません。
読んで字の如く、「調の性格を決める記号」で、ト音記号などの音部記号のすぐ右側に書いてある#や♭が調号です。
また、調号というのは、つく順番(増えていく順番)が決まっていて、上記の譜例の下段のようになっています。(左から右に増えていきます)
「この曲の#は3つだけど、レとソとラにしてみよう」なんて書き方を作曲家がすることはあり得ず、
「#1つならファ、2つならファとド、3つならファとドとソ…」
「♭1つならシ、2つならシとミ、3つならシとミとラ…」
というふうになっていますので、#♭がつく順番・つく音をしっかり覚えておけると、調号が多い曲でも、怯まずに取り組めます。
そういう意味でも、いろんな調の音階練習をこつこつやっておくことは、必要になりますね。
なお、基本的には、調性記号としてナチュラルは使いませんが、途中で転調して、「前の調性記号は外れますよ」という場合には、ナチュラルが書かれます。
この2小節目に、新たに違う調号が指示されることもありますので、見落とさないようにしましょう。
臨時記号
一方臨時記号は、各音についている#・♭・ナチュラルを指します。
臨時記号がつく位置は、音符の左側です。
臨時記号は、「1小節間有効」と決まっていますので、
このように書いてあっても、「ミ」の音には全て♭をつけます。
次の小節以降は、通常の「ミ」を吹きましょう。
引き続き「ミ♭」を吹いてほしい場合は、次の小節にも♭の臨時記号をつける必要があります。
臨時記号で勘違いしやすい記載
レッスンでたまに聞かれることなのですが、下記のような臨時記号の場合、吹く音は何になるでしょうか。
上段は、調号が「ファ」で、途中の「ファ」にダブルシャープ(半音2つ分上げる)がついています。
下段は、調号が「シ・ミ」で、途中の「ミ」にダブルフラット(半音2つ分下げる)がついています。
「ファに#がついている調だから、このダブルシャープは、半音3つ上げるのですか?」とのご質問でしたが、このような場合、元々の調号+臨時記号になるわけではありません。
臨時記号は、何もついていない状態の音符についていると考えて下さい。
あくまで、ダブルシャープはダブルシャープ、ダブルフラットはダブルフラットです。
例えば、下記のように、
調号を外す臨時記号(ナチュラル)がついていた時に、次の小節で間違わないように、親切で#や♭をつけることがありますね。
この楽譜を見て、次の小節を吹く時に「元々ファ(シ)に#(♭)がついている調なんだから、合算しなきゃ!」とは思わないはずです。
ダブルシャープやダブルフラットは、あまり見慣れないので動揺して「え?調号もあるし、一体何の音?」と思ってしまいがちですが、調号に左右されず、その音自体にダブルシャープ、もしくはダブルフラットをつけて演奏して下さいね。
おかしな音を出してしまわないために
曲を演奏していくには、調号や臨時記号を避けて通ることはほぼできません。
ソロでもそうですが、アンサンブルや合奏で、勘違いして音を出してしまうと、自分もびっくりしますし、音楽がにごってしまいます。
きちんと決まりごとを知って、正しい音で演奏できるようにしていきましょう。