クラリネット音色の合わせ方
学校は夏休みに入り、コンクールシーズン真っ只中。
昨年は中止になってしまったことを思うと、無観客でも開催されるだけいいのかなとは思いますが、他校の演奏を間近に聴くということも、コンクールの大切な部分なので、その点は残念ですね。
さて、東京クラリネット教室の生徒さんで、部活や楽団で吹奏楽をやっている方々や、小中高の部活指導に行った時によく聞かれるのが「クラリネットパートのみんなで、音色を揃えるにはどうすればいいですか」ということ。
今回は、クラリネットの音色について、どのように合わせていったら良いかを、考えていきましょう。
全員同じ音色は出せる?
まず、「音色」に対して、正しく解釈しましょう。
「クラパート全員でマウスピースやリガチャーを揃えた」「吹奏楽部に入ったら、みんな同じ型番の楽器を買わないといけない」という話を聞いたり、目にすることがありますが、それで「全員の音色がぴったり揃う」なんて夢のようなことは、はっきり言ってありません。
もちろん、同じ系統の音色は出やすくなりますが、一人一人の声が違うように、骨格や息の流し方、アンブシュアなどによって、その人の個性が出ますので、完璧に同じセッティングにしたところで、まるっきり同じ音など出ないのです。
だからと言って、音色を合わせることができないか、というと、もちろんそんなことはありません。
「音色を合わせること」と「同じ音色を出すこと」は、似ていますが違うことですので、そこをしっかり理解しておきましょう。
クラリネット音色の合わせ方
みんなでクラリネットの音色を合わせるためには、何に着目すればいいのでしょうか。
主に考えられるのは、
- 自分に合ったセッティング
- 個々の吹き方の安定・統一
- 演奏イメージの共有
という点です。
自分に合ったセッティング
先程もちらっと書きましたが、楽器やマウスピースを揃えたからと言って、「ピタッと音色が揃う」というミラクルは起きません。
もしそんなことで全員が(良い意味で)画一的なクラリネットの音色を出せるのであれば、いろいろなメーカー・型番の楽器やマウスピースは必要なくなり、一種類あれば充分、ということになります。
しかし、現状そうではないということは「各自に合ったセッティングをするべき」という考え方が、クラリネット界にはある、ということに他なりません。
また、「音色が柔らかくて好きだから」と、重めのマウスピースを使っていて、息が思うように入らず苦労している方をよく見かけますが、それは本末転倒です。
各々が、しっかりと自分の楽器を鳴らすことが、音色を合わせるための第一歩。
無理なく息が入れられることを前提に、そこから「音色を合わせること」を目指していきましょう。
個々の吹き方の安定・統一
音色にせよ音程にせよ、人は「合わせよう」と意識すると、自分の音・相手の音を探りがちになり、息を思いきり入れることをしなくなってしまいます。
弱くした方が、合うような気がしてしまうからです。
しかし、それは気のせいなんです。
まずは安定した、たっぷりした息をクラリネットに吹き込むことを徹底しましょう。
また、人によって、息のスピードに違いがあると、音の密度に差ができてしまうので、音色は合いにくくなります。
前に息を飛ばすことを常に意識すると、息のスピードは上がりやすくなりますので、「息はたっぷりと」「前に(遠くに)飛ばす」を全員が当たり前のようにできるようにしていきましょう。
演奏イメージの共有
最初にちらっと「人の声」のことを書きましたが、親子・兄弟姉妹などでもない限り、基本的に声音・声質は違いますね。
しかし、上手な方達が合唱をしている時に、揃って、まとまって聞こえるのはなぜでしょうか。
それは「どのように演奏したいか」を、全員が共有し、しっかりイメージを持っているからです。
クラリネットを演奏する時も同じです。
極端に言えば、まるっきり同じ音色を出す2人がいたとして、1人はとても穏やかに、もう1人は荒々しく演奏していたら、音色が揃って聞こえることはないでしょう。
逆もまた然り、なのです。
個々の音色だとしても、どう吹くかを揃えることで、音色も合って聞こえるようになります。
これが先述した「音色を合わせること」と「同じ音色を出すこと」の違いです。
音色の合ったまとまりある演奏を目指して
いかがでしたか。
「クラリネットの音色を合わせる」ということについて、今まで気にされてきたことと、今回お話したことは一緒でしたか。
ぴったり同じ音色を目指して、それがもしかして達成できても、ある一種類の音色の音量が上がるだけで、実はおもしろみというのがありません。
それぞれの個性のある音色を、しっかり持ち寄って、寄り添って演奏することで、クラリネットの音色の魅力が存分に引き出され、深みのある音楽を奏でることができます。
クラリネットパートとして、単一の音色を目指すのではなく、個々を生かしつつ、音色を合わせたまとまりのある演奏を目指していきましょう。