クラリネットの音色に合う『いのちの名前』
もう8月上旬も終わりですね。
明日はいよいよ東京クラリネット教室第13回発表会です。
大きな地震が心配ですが、何も起こらないことを願いつつ、出演者の皆様・お客様に楽しんでいただけたらいいなと思っています。
発表会での演奏曲で、やはりジブリ作品は人気ですが、その中でも『いのちの名前』はいろいろな世代の方が選ばれています。
自分自身が気持ち良く吹くためにも、聴いている方に心地良いと思ってもらうためにも、演奏のポイントをしっかり押さえておきましょう。
『いのちの名前』の原曲は歌詞つき
以前お話したように、久石譲さんが映画のために書いた曲では、同じメロディーを持つタイトルの違う曲が存在することがあります。
tokyo-clarinet-school.com
『いのちの名前』もその1曲で、メロディーを聴いて「あ、『あの夏へ』だ」「この曲は『あの日の川』だな」と思われる方もいらっしゃると思います。
ちなみに、『あの夏へ』に歌詞をつけたものが『いのちの名前』だそうなので、曲名は違うものの同じ曲のようです。
歌詞の内容に引っ張られたイメージのみで演奏するのは良くないですが、歌詞から受けた印象を曲作りの参考にできるのは、歌詞がある曲を演奏する際のメリットですね。
一度はどんな歌詞なのか目を通してみて、そこからどんな演奏にするかを考えてみましょう。
もちろん、全く違う世界観で演奏するのも、それはそれでありです。
クラリネットの音色に合う『いのちの名前』
皆さんよくご存知のように、クラリネットは温かく柔らかな音色が特長ですので、『いのちの名前』のようにゆったりした曲がとても合います。
美しく歌い上げたいところですね。
これだけ有名な曲なので、たくさんのアレンジ譜が出ていますが、今回は『クラリネットで宮崎駿 アニメ・ベスト』の楽譜をもとに、お話していきます。
Aメロ
楽器が一番長い状態(「シ」の音)で始まります。
力を抜いて息をたっぷり入れることで、響きのある音で吹き出すことができますので、「シを鳴らすぞ!」と気合いを入れた出だしになってしまわないように、充分注意しましょう。
この部分は、繰り返しで戻ってきますし(歌の2番)、まだ音量もあまり出さず、抑揚をつけすぎずに吹くといいですね。
十六分音符2つ「ミ・ファ♯」のアウフタクトは、これまでより音も低いですし、少し息を多めに入れて、きちんと聞こえるように吹きます。
3回繰り返されますので、淡々と吹かず、1回目より2回目、2回目より3回目、の気持ちで、強調していきましょう。
ただし、あくまでまだ曲の吹き出し。
やりすぎにはくれぐれも注意して下さい。
Bメロ
再び「シ」の音で始まるフレーズです。
Aメロは「シ・シ・シ・シ・ラ」と下がって始まりましたが、このフレーズは「シ・ド・レ」と上行しますので、少し世界が広がることを感じながら演奏しましょう。
Bメロの終わりは音域も下がってきますので、まとめるように(かといって抜きすぎず)、一旦落ち着きます。
サビ
始まりから3つ目のフレーズは、この曲のサビです。
Bメロよりさらに高い「ミ」の音始まりですし、これまでの最高音となる「ラ」まで出てきますので、よりスケールの大きい演奏になるよう(音量が強い、というのはまた別です)、のびやかに吹きましょう。
音域も広いので、音の高さと音量が比例(高いと大きい・低いと小さい)してしまわないように、充分気をつけて演奏します。
どこか切なげなメロディーですので、力強くはならないようにしたいですね。
三連符を、拍をたっぷり使って吹くことで、より味が出ます。
2番
サビの終わりまで、完全な1番の繰り返しです。
こういう場合、1番と同じように吹くことは避けましょう。
基本的には、全体の音量のアップ・抑揚の幅のアップが考えられますが、1番を歌い込んで、2番を抑える、という方法もあります。
どちらが自分の音楽を伝えられるか考えて、お好みの方を選択しましょう。
ブリッジ(間奏)
2番のあとに、8小節の間奏が入ります。
これまでの歌の部分とは、気持ちを切り替えましょう。(ここは歌じゃないぞ!くらいの切り替えで大丈夫です)
大きくフレーズを取って、最後のサビに向かいます。
D.S.(サビ3回目)
3回目のサビです。
今までの中で一番たっぷりと吹きたいところですね。
感情をしっかり込めて、切々と歌い上げましょう。
Coda
Codaに飛んで、曲が終わります。
ピアノが前奏と同じことを演奏し、今まで動いていた時が止まるような、なんとも不思議な部分です。
曲の終わりに向かってまとまっていくので、音量も下がっていきますが、「音を弱くするぞ」というよりは、近くで鳴っていた音が遠ざかっていくようなイメージで演奏すると、縮こまらずに曲を終わらせることができます。
最後の音だけ取り出して、どんなふうに曲を終えたいか、いろいろ試してみるといいですね。
物語を作ってみよう
長くもなく、シンプルな音の並びの曲だからこそ、何かを想像し表現しようとしているかどうかが、はっきり出てしまう曲です。
漠然としたイメージを持つのでもいいですが、具体的な物語を考え、今吹こうとしているフレーズが何を表そうとしているのか、何を伝えたいのか、ということを明確にして、曲に臨みましょう。
聴いている人の心に届く、素敵な音楽を作り上げて下さいね!