アンコンで良い演奏をするためにやるべきこと

いよいよ年の瀬が近づいてきました。
どんどんと気温も下がり、クラリネット本体が縮んでしまう可能性も高くなってきていますので、楽器の保管温度には充分気をつけながら、日々過ごしていきましょう。
もうすでに地区大会などが終わられている地域もありますが、東京の場合は、アンサンブルコンテストを控えて、今一生懸命取り組まれている方々も多いかと思います。
今回は、アンコンに向けて、今一度「アンサンブルすること」の心構えや気をつけるべきことを考えていきましょう。
真の意味でのアンサンブルをしよう
合奏をする時などにも「アンサンブルをする」と言いますが、今回は小編成のアンサンブル(アンコンに出るサイズのもの)について、考えていきたいと思います。
まず言えるのは、ただ楽譜通り吹けばいいわけではない、ということです。
例えばクラリネット五重奏だとして、各自が担当しているパートを吹き上げれば、アンサンブルしていることになるかと問われれば、そうではありません。
それは単に、同じ曲を、同じタイミングで演奏しているだけに過ぎず、本当のアンサンブルとは、互いがアンテナをしっかり張り、一つの曲を作り上げることを意味します。
「自分のパートをちゃんと吹く」ことは最低限やるべきことであり、アンコンではその先の「音楽をどう作り、どうアンサンブルしているか」を見られますので、自身のパートが吹けるだけで満足しないように気をつけましょう。
アンコンで良い演奏をするためにやるべきこと

音楽をやっていく上で、何か賞をもらったり、良い評価を受けることだけが目的・目標になるのは寂しいことですが、アンサンブルコンテストというのは、より上の成績を目指すために出場するものですので、審査員に「素晴らしい演奏だった」と思ってもらうために、押さえるべき部分はきっちり押さえていきましょう。
曲のイメージの共有
どんな曲なのか、どう音楽表現をしたいのか、どうするべきなのかを、きちんと共有しましょう。
極端な話、同じ曲なのに「これって、南国の曲っぽいな」と思っている人と、「猛吹雪の中、頑張って歩いているみたい」と感じている人がいたら、やはり表現内容に差が生まれてしまいます。
また、「何も思っていない」という人がいるのも、良くありません。
大筋で構いませんので、曲のイメージを揃えるようにしましょう。
アインザッツ
出だしのタイミング、肝心な部分の縦の線のずれは、「お、この団体は期待できるかもしれない」という気持ちを削いでしまいます。
よく言われているのが、「審査員は最初の数音で、その団体を聴くかどうか決める」ということ。
曲の最初がバラバラッとしてしまわないよう、合図を出す人は、迷いなくわかりやすく出すことを心がけ、また、他の奏者は「合図はあの人が出しているからいいや」ではなく、その合図に合わせたブレスを取るようにしましょう。
音程
音程を気にするあまり、縮こまった演奏になってしまうことは、音楽をする上で望ましくありませんが、やはりコンクールの類では、同じ曲をまるっきり同じように演奏している2団体があった場合、音程にも気を回せていて、すっきりと聴かせることができている方が、良い成績につながります。
ベースの音程をぴったり合わせることはもちろん、要所(和音であったり、ユニゾンであったり)で音程を合わせることができるかできないかは、「周囲を聴けているか」の評価にもつながります。
部分的にできても、曲の中で音程を合わせることができなければ、意味がありません。
普段から、録音などを活用して、自然に良い音程に収めることができるように気を配りましょう。
アイコンタクト
これは、実際に目が合わなくても構いません。
「大切な箇所で、要となるパートに、気が回せているかどうか」ということを指します。
要となるパートというのは、合図を出す・出さないだけではなく、自分と同じ動きをしていたり、全体を引っ張るパートだったり、内容は様々です。
吹奏楽やオーケストラの重要な部分で、指揮者に目を向けることと同じですので、譜面とにらめっこしながら吹くようなことがないようにして下さい。
音量バランス
簡単に言うと、同じフォルテだった場合、低音パートの方が出す必要があります。
以前からお話してきているように、低い音の方が人の耳に届きにくいからです。
パートによる音量のバランスは、よくピラミッドに例えられます。
「下は大きくどっしりと、上は軽く乗っかる」というイメージを持って、低音を担当している人は思っているより一段出すようにしましょう。
それは、弱い音量の時も同じです。
支えがぐらつけば、演奏の安定度は一気に低下してしまいます。
全員で作る強弱
「自分は、ここの強弱、これくらいだと思う」ではなく、全員でピアノもフォルテも作り上げましょう。
もちろん、みんながみんな同じ強弱の指示ではないこともありますが、「自分は下げたつもり」「え、フォルテになってるでしょ?」では、バランスも取れなくなってしまいます。
強弱表現には、周囲との協力が不可欠です。
曲中張り続けるアンテナ
楽譜を見ながらの演奏だとしても、少なくとも両隣、できれば全体に向けて、ずっとアンテナを張り続けましょう。
気配を感じ、ちょっとした楽器の動きやブレス、視界にきちんと入るようであれば、同じ動きの人の指の動きまで見て、同じタイミングで自身の指を動かせれば、ぴったりと揃った演奏が可能になります。
ほんの数分の演奏でも、全員が神経をすり減らすくらいのアンテナが張れれば、演奏の精度は飛躍的に向上します。
練習の成果を本番で最大限出せるように

「皆で合わせる」「アンサンブルする」という上で、気にするべきことをお話してきましたが、大前提として、音符の長さを始め、強弱・アーティキュレーションを正確に把握し、どんな音楽表現をしたいか、ということを、個人個人が磨き上げておくことは必要になります。
また、「練習はいいんだけど、いざ本番みたいに通すとうまくいかないんだよね」ということは、多々あると思いますので、日々の合わせの際に録音・録画を活用し、「では、どううまくいかないのか」ということを、きちんとあぶり出し、解決方法を考え、実践していきましょう。
あとは、「あれだけやったんだから、自分達はできる!」と信じ、本番に臨んでいただけたらと思います。
会心の出来で演奏を終えられるよう、あと少し頑張って下さいね。